令和4年予備試験論文式試験 憲法 参考答案例

令和4年予備試験論文式試験の参考答案例を公開中!

be a lawyerでは、令和4年予備試験の参考答案を公開しております!

これは、あくまで参考答案ですので、試験現場でこのレベルの答案を書くことは求められておりません。

予備試験論文式試験で大切なのは、いかに論点を落とさないか、という点です。

本年度の予備試験論文式試験を受験された方もそうでない方もぜひbe a lawyer作成の参考答案を学習の参考にしていただければと思います。

今回は令和4年予備試験憲法の参考答案例を掲載させていただきます。

 

令和4年予備試験論文式試験 憲法 参考答案例

第1 争議行為の禁止規定(以下、規制1という)

1 規制1は、本件職員のような者の争議行為を行う権利を侵害し、憲法28条に反し、違憲ではないか。

2⑴ 団体行動権とは、労働者の団体が労働条件の実現を図るために団体行動を行う権利をいうところ、争議行為は労働者が使用者に対して労働条件の改善・向上を求めるものであるから、争議行為を行うことは団体行動権として保障される。

3⑴規定1は本件職員の争議行為を禁止するものであり、上記権利に対する制約が認められる。

⑵ もっとも、本件会社のような会社に属する職員は、公務員と同視される者として、上記権利の制約は緩やかに審査されるべきではないか。

ア この点、判例は、①公務員の勤務条件は国会の制定した法律・予算によって定められるから政府に対する争議行為は的外れであること、②公務員の争議行為には私企業の場合とは異なり市場抑制力がないこと、③人事院をはじめとする制度上整備された代替措置が講じられていること、から争議行為の全面的規制を合憲としている(全農林警職法事件参照)。

イ 本件会社は、国から補助金を受けており、税金で経営を支えているという点で、公務員に類似する性質を有する。また、重要な労働条件の変更には国土交通大臣の承認を要求されており、国会ではないものの、国の機関が本件会社の職員の労働条件の決定権限を有するから、本件会社に対する争議行為は的外れであるとも思える(①)。

もっとも、本件会社はあくまで民間の鉄道会社であるから、その争議行為には公務員とは異なり市場抑制力が働くといえる(②)。また、本件会社には人事院のような制度上整備された代償措置がないため、争議行為に代わるものが存しない(③)。そうであるならば、本件会社を公務員と同視することまではできず、本件会社の職員にも団体行動権は認められるべきである。したがって、上記判例の射程は本件には及ばない。

4⑴ ここで、国は本件会社のような会社の職員は、公務員類似の地位にあるから、上記権利が保障されるとしても、その権利の重要性は低いと反論する。もっとも、国土交通大臣が最終的な労働条件の変更権限を有するとはいえ、労働者としては一次的には使用者に対して、労働条件の改善を求め、使用者が同大臣に対して再建計画を提出し、労働条件の改善に関する承認を得ることを求めるという関係にある以上、労働者が直接働きかけるべきは同大臣ではなく、使用者であるといえる。したがって、本件会社に属する職員のような者が公務員類似の性質を有していることを加味しても、上記権利は労働者の労働条件改善のための不可欠な権利であるといえるから、重要である。

⑵ 規定1は争議行為の一切を例外なく全面的に禁止するものであり、上記権利に対する制約は強度である。

⑶ 以上から目的が重要で、手段が実質的関連性を有していない限り違憲となると解する。

5⑴ 規定1の目的は、経営危機に陥った地方の私鉄の経営再建を国が支援することにある。私鉄の多くが経営危機に陥っており、路線廃止や賃金カット・人員削減が生じている中で、国が私鉄の経営再建を行うことが急務となっていた。そして、私鉄が経営破綻をすれば、国民の自由な移動が妨げられ、重大な損害が生じかねない。また、争議行為が行われれば、鉄道の運行が困難となり、利用客が減少する恐れがある。したがって、本件職員のような者の上記権利を制約してでも目的を達成すべきだったといえ、目的は重要である。

⑵ 最大100億円の補助金を支給すれば、私鉄の経営を維持できる一方、争議行為の一切を禁止すれば、労働者が使用者に対して労働条件の改善を求めたくても、例外なくそれができないから手段として行きすぎている。また、違反した者に刑罰を科しており、争議行為に対する委縮効果を生じさせているから相当性を欠く。したがって、実質的関連性を欠く。

6 よって、規定1は上記自由を侵害し28条に反するから違憲である。

第2 あおり、そそのかし行為に対する処罰規定(以下、規制2という)

1 規制2は争議行為に対するあおり行為やそそのかし行為を行う権利を侵害し、28条に反し違憲ではないか。

2⑴ 争議行為を行う権利が28条で保障されていることは前記の通りであり、争議行為に対するあおり行為やそそのかし行為については、争議行為に通常随伴するものであるから、28条の保障が及ぶと考える。そして、規制2は争議行為をあおり、又はそそのかした者に対して刑罰を科しているところ、刑罰は上記権利に対する制約そのものではないが、刑罰があることによって争議行為に対するあおり行為やそそのかし行為が萎縮する恐れがあるから、規制2は上記権利に対する制約であるといえる。

⑵ 上記権利は争議行為そのものではなく、争議行為に通常随伴するものであるから、28条が保障する労働基本権の核心部分ではなく、その周辺部分の権利である。したがって、規制1における争議行為を行う権利に比して、上記権利の重要性は一定程度にとどまるというべきである。

また、規制2は規制1とは異なり、争議行為に対するあおり行為やそそのかし行為それ自体を禁止するものではないが、これらの行為を行った者に対して刑罰を科すものであるという点で、あおり行為やそそのかし行為が萎縮するため、上記権利に対する制約は一定程度強度である。

⑶ ここで、東京都教組事件は、公務員の争議行為に関して、あおり行為やそそのかし行為とは、違法性が強度なものに限って処罰の対象としているにすぎないと合憲限定解釈することで、争議行為の煽り、そそのかし行為を禁止した規定を合憲と解釈した。もっとも、前記の通り、本件従業員は公務員とは同視することができないから、上記判例の射程は及ばない。

⑷ 以上の通り、一定程度重要な権利が強度に制約されているので、厳格に審査すべきである。したがって、目的が重要で手段が実質的関連性を有していない限り違憲であると解する。

3⑴ 規制2の目的は規制1と同様であるところ、前記の通り重要である。

⑵ 手段については、立案担当者の説明によれば、争議行為の煽り行為やそそのかした者は、争議の原因・遂行の原因を作り争議行為の原動力を与えているので社会的責任が重いとしているが、煽り行為やそそのかし行為にも争議行為への関与の程度に差がある以上、一律に争議行為への煽り行為やそそのかし行為を禁止する合理性を欠く。また、争議行為への煽り行為やそそのかし行為を一律に禁止せずとも、違法性の高いものに限り規制対象とすれば目的は達成できるから相当性を欠く。

4 よって、規制2は上記自由を侵害し、28条に反するから違憲である。                          以上

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