令和4年予備試験論文式試験 刑法 参考答案例

業界最速! 令和4年予備試験論文式試験の参考答案例を大公開!

be a lawyerでは、令和4年予備試験の参考答案を公開しております!

これは、あくまで参考答案ですので、試験現場でこのレベルの答案を書くことは求められておりません。

予備試験論文式試験で大切なのは、いかに論点を落とさないか、という点です。

本年度の予備試験論文式試験を受験された方もそうでない方もぜひbe a lawyer作成の参考答案を学習の参考にしていただければと思います。

まず、公開させていただくのは、刑法になります。設問1では実行の着手、間接正犯、共謀共同正犯、共謀の射程、具体的事実の錯誤について問われています。設問2では、事後強盗罪について、刑法238条にいう「窃盗」の意義、窃盗の機会、238条にいう「暴行」の意義、について問われています。今年の問題は、刑法総論と刑法各論の幅広い知識を問う良い問題であると分析しています。

以下に令和4年(2022年)予備試験刑法の参考答案例を掲載しております。皆様の学習を支援する趣旨で掲載させていだたいておりますので、無断転載はご遠慮ください。

【令和4年予備試験】 刑法 参考答案例

第1 設問1

1 YがC店の高級ブドウを万引きする目的でC店に立ち入った行為について、甲に窃盗未遂罪(243条、235条)の間接正犯が成立しないか。

⑴ まず、Yに窃盗未遂罪が成立するか、検討する。

ア 他人の財物」とは他人が占有する財物をいうところ、本件高級ブドウはC店の果物コーナーに陳列されているから管理者Bの事実上支配が及んでいるといえ、占有が認められる。したがって「他人の財物」に当たる。

イ 未遂犯の処罰根拠は、結果発生の現実的危険を生じさせた点と実行行為に密接な行為を行った点にあるから、未遂犯が成立するには結果発生の現実的危険性と実行行為との密接な行為が行われることが必要である。

ウ 本件ではYは、高級ブドウを万引きする意図でC店に立ち入っているところ、当該立入りの前にYは甲と共にC店の果物コーナーにある高級ブドウを確認していることからすれば、Yがブドウが置かれている位置を把握している可能性があり、ブドウを万引きする現実的危険が生じていたといえる。また、YがC店に立ち入ることができれば、万引きをするにあたって特段の障害がないため、立ち入り行為は実行行為との密接性が認められるといえる。

したがって、Yには窃盗罪の実行の着手があったといえる。

エ もっとも、Yは果物コーナーの場所が分からなかったため、万引きを行えなかったから、Yには窃盗未遂罪が成立するにとどまる。

⑵ では、上記行為に甲に窃盗未遂罪の間接正犯が成立するか。その要件が問題となる。

ア 正犯とは自らの意思で犯罪を実現し、第一次的な責任を負うものである。そのため、①他人の行為を一方的に支配・利用し、かつ、②特定の犯罪を自己の犯罪として実現する意思が認められた場合には、間接正犯として正犯性を肯定することができると解する。

イ 甲はYに対して、C店の高級ブドウを万引きしてくるように強い口調で言っており、6歳の女の子であるYはこれに畏怖し、甲の指示に従わざるを得なくなっている。そして、甲はYの母親でYは甲とXと共に暮らしていたことからすれば、Yは甲に依存する立場にあったといえ、甲の指示に従わない選択は取れなかった。これらの事情からすれば、甲はYの行為を一方的に支配・利用していたといえる(①)。そして、甲はYに犯行を決意させた首謀者であって、自らもブドウを食べる意思があったことからすれば、自己の犯罪として実現する意思があり、正犯意思が認められる(②)。

⑶ よって、甲に窃盗未遂罪の間接正犯が成立する。

2 XがC店からステーキ用牛肉5パック、及びアイドルの写真集を万引きしたことについて、甲に窃盗罪(235条)の間接正犯が成立しないか。

⑴ まず、Xに窃盗罪が成立するか、検討する。

ア 「他人の財物」とは他人が占有しする財物をいうところ、本件牛肉5パック及びアイドルの写真集については、前者はC店の精肉コーナー、後者はC店の雑誌コーナーに陳列されており、管理者Bが事実上支配していたといえ、占有が認められる。したがって、「他人の財物」に当たる。

イ 「窃取」とは占有者の意思に反して、自己または第三者のもとに財物の占有を移転させることをいうところ、Xは牛肉5パック及びアイドルの写真集を精算することなく店外に持ち出していることから、もはやC店の管理者Bの事実上の支配が及んでおらず、Xの事実上の支配下にある。したがって、占有者たるC店の管理者Bの意思に反して自己のもとに財物の占有を移転させたといえるから「窃取」に当たる。

ウ 不可罰な一時使用と毀棄罪との区別の観点から、窃盗罪においては不法領得の意思、すなわち権利者を排除して他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思が必要である。

本件では、Xは牛肉を食べるつもりで、アイドルの写真集を自己の所有物にする意思で盗んでいるから権利者排除意思及び経済的利用意思があり、不法領得の意思が認められる。また、上記事実からXは窃盗罪の客観的構成要件を認識・認容しているから故意が認められる。

よって、窃盗罪の構成要件に該当する。

⑵ア 間接正犯該当性は前記の基準で判断する。

イ 本件では、甲は牛肉をXやYらと食べるつもりでXに対して上記指示を行った首謀者であるから、自己の犯罪として実行する意思があり、正犯意思が認められる(②充足)。

ウ 甲はXに対して、「今晩、ステーキ食べたいね。C店においしそうなステーキ用の牛肉があったから、とってきてよ。」、「あのスーパーは監視が甘いから見付からないよ。見付かっても、あんたは足が速いから大丈夫。」などと言い、Xに対して窃盗をするように指示をしている。甲がXの母親であって、Xは甲に依存する立場であったことからすれば、甲はXを一方的に利用支配していたとも思える。

もっとも、Xは「万引きなんて嫌だよ。」と言い、万引きが犯罪であることを認識している。そして、Xは牛肉を見つけた際、どうせなら多い方がいいだろうと考えて5パックを手にしているのであって、臨機応変に牛肉を盗んでいるといえる。これは甲に一方的に支配されているのではなく、X自身が自らの判断で犯罪を行っていることの証左である。したがって、甲はXを一方的に利用支配していたとはいえない(①を充足しない)。

⑶ よって、窃盗罪の間接正犯は成立しない。

2 では、上記行為に窃盗罪の共謀共同正犯(60条、235条)が成立しないか。

⑴ 共同正犯の処罰根拠は、犯罪結果に対する因果性を及ぼした点と正犯意思にある。したがって、「共同して」犯罪を「実行した」といえるには、①共謀、②共謀に基づく実行が必要であると解する。

⑵ア 共謀とは、故意及び正犯意思を前提とする特定の犯罪を共同実行する旨の意思連絡をいう。

イ 甲はXに対してC店の牛肉を盗むように言っているから、権利者排除意思、経済的利用意思及び窃盗罪の認識認容があったといえ、窃盗罪の不法領得の意思及び故意を有する。そして、上記したように甲には正犯意思が認められる。これらの認識のもとで、甲はXに対して窃盗罪を行うように仕向け、Xはこれを了承しているから、共謀が認められる(①充足)。

⑶ 上記したように、Xは窃盗罪を行っているから、共謀に基づく実行があると思えるが、甲が仕向けたのは、牛肉を盗むことにとどまるから、Xがアイドルの写真集を盗んだことは、共謀の射程が及ばないのではないか。

ア 前述の通り、共同正犯の処罰根拠は、犯罪結果に対する因果性を及ぼした点と正犯意思にあるから、犯罪の性質、態様等から当初の共謀の因果性が及んでいると評価できる場合には、共謀の射程が及び、共謀に基づく実行があるといえると解する。

イ 甲が指示したのは、C店の生肉コーナーからステーキ用牛肉を3パックに対する窃盗罪である。そして、Xが実際に実行したのは、ステーキ用牛肉5パックとアイドルの写真集に対する窃盗罪である。このことからすると、当初の共謀とXの実行とでは、客体が異なっている。もっとも、甲が指示した通りにXは窃盗罪を実現しており、犯罪態様に変化はない。そして、Xは当初は万引きをする意思はなかったのであり、C店での犯行意思を生じたのは甲との共謀が原因であるといえる。そうすると、客体に差があるとしても、当初の共謀の因果性はXに及んでいたというべきである。

よって、当初の共謀の射程が及んでいるといえ、Xの行為は共謀に基づく実行といえる(②)。

⑷ なお、甲は牛肉3パックを盗んでくることしか認識していないから、超過分の牛肉2パック及びアイドルの写真集について故意が否定されないか問題となるも、およそ窃盗罪を実現する意思で窃盗罪を実現している以上、故意は否定されない。

⑸ よって、窃盗罪の共謀共同正犯が成立する。

第2 設問2

1 甲に事後強盗罪(238条)が成立しない主張としては、①窃盗未遂罪が「窃盗」に含まれない、②甲の暴行が窃盗の機会に行われていない、③甲のFに対する暴行が「暴行」に含まれない、という主張が考えられる。

2 ①について

⑴ 事後強盗罪の強盗罪と同等に扱われる根拠は、実質的に暴行・脅迫を用いて財物を取得したと評価できることにある。したがって、窃盗未遂罪は財物を取得していないため、事後強盗罪の処罰根拠が妥当しない。以上より、窃盗未遂罪は本罪の「窃盗」に含まれないと解する。

⑵ 本件では、甲はE店に陳列され、店長Dの事実上の支配下にある「他人の財物」たる液晶テレビを万引きしようと持っていたトートバッグに入れたが、警備員Fに気づかれたため、もとの場所に同液晶テレビを戻している。トートバッグに入れた時点では、同テレビはトートバッグからはみ出る大きさであって、甲に占有が移転したとまでは評価できないと考える。したがって、甲には、窃取に着手したがその目的を遂げていないので、窃盗未遂罪が成立する。

⑶ よって、甲は「窃盗」にあたらず、事後強盗罪は成立しないとの主張が考えられる。

3 ②について

⑴ 事後強盗罪の処罰根拠は前期の通りであるから、本罪にいう「暴行又は脅迫」行為は、窃盗の機会にされる必要があると解する。窃盗の機会の判断は、犯人の追求可能性が継続しているか、窃盗行為と時間的・場所的接着性が認められるか否かで判断すべきである。

⑵ 本件では、Fは万引きをしようとしている甲に気づいたが、甲は犯行現場であるE店から逃走しており、Fは一度甲を見失っている。そして、甲はE店から約400メートル離れた公園まで逃げており、Fは甲を追跡していない。そのため、犯人の追求可能性は一度消滅している。

また、甲がFに暴行を加えたのは、E店であり窃盗場所との場所的接着性は認められる一方、甲がE店から逃走してから約15分が経過した時点での暴行であって、窃盗行為との時間的接着性は否定せざるを得ない。これらの事情からすれば、甲がFに対して加えた暴行は窃盗の機会に行われたとは評価できないから、甲に事後強盗罪は成立しないとの主張が考えられる。

4 ③について

⑴ 事後強盗罪は強盗罪と同視される犯罪であるから、事後強盗罪にいう「暴行又は脅迫」とは、相手方の犯行を抑圧するに足りる程度の不法な有形力の行使または害悪の告知をいうと解する。

⑵ 甲はFに対して両手でFの胸部を1回押しており、Fはこれにより体勢を崩して尻餅を付いているところ、たしかに両手で人の胸部を押せば、転倒させる危険があるものの、甲の暴行は当該1回にとどまっている。また、甲は35歳の女性であって、Fも35歳の女性であることからすれば、体力的な差はないと考えられる。そして、当該暴行が行われたのはE店の駐輪場であり、Fは周囲に助けを求めることも可能であったと考えられる。これらの事情からすれば、上記暴行は、犯行を抑圧するに足りる程度のものとは言い難く、「暴行」に当たらない。

⑶ よって、甲に事後強盗罪は成立しないとの主張が考えられる。以上

最後に

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